巨匠とマルガリータ

「『巨匠とマルガリータ』? いい本ね。魔女とビューーーーティ・クリームの話よ。魔女とビューーーーティ・クリーム」と、夏の表参道のルーフトップ・バーでロシア人のゲイのサラリーマン(確か名前はイゴール)が言っていたのが印象的な本書。発禁処分を経て作者の没後26年後だかにやっと日の目を見たという、文学史の中でも重要な位置を占める超名作なのですが、オカマ心を掻き立てる要素もふんだんで、モード誌好きな女性とかもかなり楽しんで読めるのではないでしょうか? あと猫好きは必読!(もちろん、世の女性だったら絶対に欲しいこと間違いない、クレーム ドゥ・ラ・メールも顔負けの『ビューーーーティ・クリーム』も出て来ます。)

お金持ちでイケメンで自分のことを溺愛する旦那さんがいながら、一ミリも幸せじゃないマルガリータ。そう、彼女は『巨匠』と呼ばれる作家を愛しているのです。不倫の恋でありながら二人は束の間の幸せな時間を過ごすのですが、やっと書き上がった作品が認められなかった巨匠はマルガリータの前から姿を消してしまいます。

ポンティオ・ピラト(キリストの処刑にあたり恩赦を与えなかったローマ帝国の総監)の物語の緊張感、モスクワ乗っ取りをたくらむ悪魔軍団が引き起こす数々の事件のドタバタコメディーのような荒唐無稽さなど、とにかく読みどころはいっぱいあるのですが、優しく純粋なラブストーリーとしても絶対に面白いので文学が苦手な方も読んで欲しいです。(こんなにピュアに誰かを愛せる可能性もあるのかもしれないな、とか思うだけでもモード誌読むような戦う女は癒されるのでは。)確かにロシア文学で、確かに分厚く、セリーヌやらステラのバッグには入らないかもしれませんが、価値があります。そして、二本足で歩くオシャレなネコちゃん、ベヘモートがひたすらかわいい!ヒゲに金粉をまぶしておしゃれするとか、もう……、犬派の私もメロメロです。

スターリンに才能を認められながらも(ブルガーゴフはスターリンに直接手紙を書く権利を持っていたとのこと)発禁処分にされたブルガーゴフ。悪魔軍団の首領、ヴォラントの言葉、「決して他人に願い事をしてはならない、特に強い者には」は深く印象に残ります。この二人の関係とかも、いつかきっちり調べてみたいな。偉大な作家が『書かねばならなかった物語』は、愛とユーモアとヒューマニティーに対する真摯な思いに満ち溢れています。傑作!必ず読むべし!(そして池澤夏樹さん、らぶ!)

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PR・翻訳家・読書狂、今泉渚の妄想書店です。個性的な仲間たちとゆるくブックレビューを書いています。

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