都市

ウエルベックがお気に入りとして紹介していて、気になって買って読んで、それから私も大好きになった、クリフォード・D・シマックの『都市』。『存在の耐えられない軽さ』のカレーニンとか、『ある島の可能性』のフォックスとか、小説に出てくるお気に入りのワンちゃんはたくさんいますが、この小説のナサニエルやタウザーやエベンザーも堪らないのです。特にタウザーのエピソードは犬好きのファンタジーと言っても過言ではないのでしょうか?

この小説の世界では、人間はより完璧な存在になることを求めて宇宙に旅立ってしまい、地球に残されたワンちゃん(能力を開発されて優秀な頭脳を持っている。しゃべります)が新たな文明を築いています。人類はもはや存在していたことも定かではない、神話的な存在なのです。ワンちゃんの方が、誠実で、賢くって、愛情深くって、戦争も起こさないし賢いよね!というメッセージはもちろん根底にあって、人間の残虐性はことあるごとに強調されています。でも、それにも関わらず、犬たちの何か大きなものに服従したいという本能的な部分を描いているところが面白いのです。そしてそれはもう一つの主要キャラクターであるロボットにもいえること。主従関係の主がいなくなってしまった世界はなんだかぼんやりとしていて物悲しい。犬たちの人間みたいに、人間たちの神様もそんな不完全で身勝手な存在なのかなとか思ったりして。

それにしても、こんなモダンな物語が1952年に書かれているなんて……、SF作家って恐ろしい。何度読み返しても違う解釈ができる非常に哲学的な本。(まだ amazon market place で千円ぐらいで買えます。)犬を飼いたくなること間違いない名作です。読みましょう!

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PR・翻訳家・読書狂、今泉渚の妄想書店です。個性的な仲間たちとゆるくブックレビューを書いています。

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